外観検査に使われるAIとは?教師あり、教師なし学習のメリット、デメリットを紹介。
外観検査AIとは
外観検査とは部品や製品の外観を検査することですが、
その中でも、外観検査AIとは、特に自動外観検査の中の画像検査ソフトウェアに画像認識AIを用いたものを言います。
2012年画像認識精度を競う世界的な競技会であるILSVRCにてディープラーニングを使った画像認識AIが従来の画像認識手法に対して歴史的大勝を収めて以来、自動運転技術や顔認証技術など、急速に様々な技術革新に適用されてきました。
これまでの画像認識は人間が手動で画像処理のフィルタなどを作ってきましたが、ディープラーニングでの画像認識は、データを学習して認識ができるようになるという技術です。
データを学習だけで認識できるようになるという点で、従来の画像処理の専門性を必要とせず、普及を加速させています。
近年、この画像認識AIは外観検査にも急速に適用されるようになってきました。
たとえば、切削加工の金属製品のキズ検査の場合、人間による目視検査であれば加工痕かキズかは判断できますが、従来の画像処理による外観検査では、その区別が難しいケースが多くありました。そういったケースでも、AIを活用した外観検査の場合、学習を重ねるほどに精度が向上します。
このように、従来画像処理では難しかったものが、より高精度で人間に近しい検査が可能になってきているために、非常に活用が進んできています。
教師なしと教師ありの違い
外観検査AIには以下の種類があります。
教師あり学習(Supervised Learning)
教師あり学習とは、学習データに人間が正解ラベルをつけて学習させる方法です。画像上で作業員が欠陥か否かのラベルをつけて教えることで、その後は自動で不良を検出してくれます。
つまり、検査には不良品のデータが必要ということを意味します。
教師なし学習(Unsupervised Learning)
教師なし学習では、不良品のデータを使わず良品データのみで学習させます。覚えた良品からの乖離を見ることで、不良品か否かの判断をAIが行います。
不良品を教える必要がない、という意味で教師なし学習、または良品学習と呼ばれます。
教師あり学習と教師なし学習のメリットとデメリット
外観検査における教師あり学習と教師なし学習には、それぞれ以下のメリットとデメリットがあり、適切に実行する必要があります。
教師あり学習のメリット
教師あり学習は、様々な状況で撮られた画像を用いて不良を学習させれば、対象物の見え方一定でなくても検出できるようになる傾向があります。
例えば、鋳造部品の鋳肌面にあるような鋳巣を検出したい際など、対象物の見え方がランダムだったり、製品が変わってしまう場合に有効なケースが多いです。
一般に、欠陥が似たようなパターンで出現し、データ量が多く集まるのであれば、精度が向上しやすく、有効な検査方法です。
教師あり学習のデメリット
一般に、不良は多く集まるものではないため、データを収集するためには、多大な時間とコストがかかることがあります。
また、教師あり学習では、学習した不良以外の不良を検出させることはできません。
例えばキズ不良のデータを集めて学習させても、違う外観である打痕不良を検出させることは難しく、打痕不良を新たに収集する必要があります。
このように、新たな不良モードを検出させたい場合にも、再度時間とコストが必要です。
教師なし学習のメリット
不良品を集める必要がなく、良品を収集すれば良いという点で検査の立ち上げを早くすることが可能です。また、ラベル付のコストも不要です。
また、ラベル付けされていないデータから学習するため、未知のデータに対しても予測が可能となり、様々な不良が出る現場での精度の立ち上がりが早いということが多くあります。
教師なし学習のデメリット
学習した良品とは異なるものは異常であるとみなすため、本来不良品ではないものを不良と過検知する可能性があります。
例えば、「学習した良品よりも位置がずれている」「吹けば取れるので本来良品とするホコリが乗っている」場合でも不良とみなすケースがあります。
精度よい検査を実現するために
AI外観検査の精度を上げるためには、撮像機器や撮像方法にも工夫が必要です。以下に、具体的なハードウェアや撮像方法の工夫点をいくつか紹介します。
撮像条件の工夫
画像から欠陥であることを判断しやすくすることが重要です。さらには、過検出要因となるものと欠陥が異なる見え方を工夫する必要があります。
撮像に使用する照明の種類や、照度や角度を調整することで、影やハレーションを減らし、より欠陥が見やすい画像を得ることができます。このような改善により、AIモデルが正確な特徴を認識しやすくなります。
画像処理で用いられてきたような、対象の照らし方を均一にするような照明の例として、同軸落射照明、ドーム照明などがありますが、こういった照明機器の工夫は、AIの検査においても有効です。
搬送の工夫
特に教師なし学習では、良品のばらつきが大きいほど、精度向上が難しくなります。
搬送機では、対象物が回転・傾きなどをして流れてくる場合には、できるだけ対象製品を整列する方が良いでしょう。
または、画像上で、対象物を形状マッチングなどで認識し、回転や位置の補正をしたうえで学習・検出させる仕組みが良いでしょう。
これらを考慮することで、AI外観検査の精度を向上させることができます。ただし、ハードウェアや撮像方法の改善には、コストや環境などの制限があるため、効果的な改善方法を選択する必要があります。
独自教師なしアルゴリズムGemini eye の手法
ここ数年、こういった課題に対する対応策として、良品だけを学習したAIがイメージする良品との差分を算出し異常検知をする「教師なし学習」が注目されています。
この手法は、欠陥を覚えさせるものではないので、学習のための不良品画像収集が不要であり、未知の不良を検出することができるという利点があります。
この特性が先述の課題への解の一つとして提唱されてきましたが、実務においては、一般的な教師なし学習手法で高い精度を目指すには数万枚の学習が必要であり、結局手間がかかるという声が散見されます。
このような課題に対して、弊社は独自の特許技術を搭載したAI外観検査ソフトウェアGemini eyeを提供しています。
本製品では、先述の一般的な教師なし学習の課題に対して、2つの技術的特性を持たせています。
一つ目は、検査対象の記憶方法です。先述の通り、通常の手法であれば木目などの自然物に対しては、良品画像としてはそのパターンが無数に存在するため、適切にAIのイメージを記憶することができません。一方でGemini eyeでは、対象のパーツ・構造(ここで言う木目そのもの)を記憶します。そのため、木目調が変わっても、AIが適切に良品としてのイメージを作ることができ、本来の異常にのみ適切に異常として反応するという高い柔軟性を持たせることが可能になります。
二つ目は、対象のばらつきの記憶方法です。検査対象によっては、撮像条件がばらつくことや、ある部位が加工条件によってやむを得ないばらつきが生じることがあります。Gemini eyeでは、これを潜在変数として記憶するだけでなく、ばらつきも記憶することで、本来存在するばらつきに対して異常として反応することを防ぐ特性、具体的には、ばらつきが大きい領域であるほどの異常度を下げる特性を持たせています。
これらの特徴により、限られた良品画像の学習で一般的な手法を用いたものより高い精度を出し、食品や樹脂等のばらつきの大きい製品検査にも実際に適用しています。