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外観検査用レンズの選び方と主要メーカー

外観検査用レンズの選び方と主要メーカー

レンズの種類


自動外観検査では、撮像機器が必要です。
撮像機器は主に照明、カメラ、レンズから構成されます。レンズは対象物の写り、引いては判定精度を左右する重要な構成要素です。

レンズの種類には、CCTVレンズ(CLOSED-CIRCUIT TELEVISIONレンズ)とテレセントリックレンズがあります。

通常レンズ(CCTV)


産業用途だけでなく、防犯カメラや監視カメラなどの映像を撮影するためも利用されるレンズです。
一般的に、レンズの焦点距離が短く、視野角が広いため、広い範囲を一度に撮影することができます。焦点距離や視野角については後述します。
また、低価格で生産が容易であるため、導入コストが抑えられます。
一方で、広い視野角を観察できる分、視野の端の方は死角になるだけでなく、歪んで見えてしまいます。
そのため、寸法測定など歪みが影響するような場合には歪み補正なしでは利用ができません。
また、ピントが合う距離が1点のため、複雑な立体形状、高低差のある被写体は見えないでしょう。

 

テレセントリックレンズ


CCTVレンズの歪みの問題に対して、高低差のある検査体でも、視野角面内の歪みの少ない撮像ができ、さらにワーキングディスタンスの変動に対して視野角撮像サイズは変動しないことが特徴です。
CCTVレンズと異なり、光軸と平行な光のみが入光するため、死角や歪みが生じません。
そのため、寸法の精密な測定や、死角が生じてほしくない立体形状のある対象の検査に用いられます。
一方で、被写体側のレンズが対象物より物理的に大きい必要があることや、一般的なレンズ設計に比べてレンズ構成が複雑であるため、
高価になりやすいということに留意する必要があります。

レンズ選定のポイント


一般的に用いられるCCTVレンズを中心に、レンズの選定のポイントを説明します。

・視野角とワーキングディスタンスを決める
・検査部位のピントを合わせる
・明るくて鮮明な画像を取得する

 

視野角とワーキングディスタンスを決める


レンズの役割は、画像に写る対象の範囲(視野角)からの光線をカメラの撮像素子に結像することです。
レンズを選定するとレンズの焦点距離が決まり、カメラを選定すると撮像素子のサイズが決まります。
焦点距離は、「8mm」「16mm」「25mm」「50mm」のレンズが一般的に普及しています。
また、撮像素子はカメラに搭載しているイメージセンサのことであり、「1/4型」「1/3型」「1/2型」「1/1.8型」「2/3型」(インチ表記)が普及しています。

ここで、レンズの視野角、撮像素子、焦点距離とワーキングディスタンス(WD)の関係を以下の図に示します。



まず、検査部位が写るように、すなわち視野角内に被写体が写るようにレンズと被写体の距離を調整します。
なお、レンズの焦点距離が小さいものを選定すると、ワーキングディスタンスは小さくなります。
一般に撮像機器を検査工程内に入れる際には、設置スペースを考える必要があります。設置スペースが小さい場合には、ワーキングディスタンスを小さい必要があるので、焦点距離が小さいものを選ぶ必要があります。
ただし、焦点距離が短いものは、画像端部の歪みがより大きくなることや、端部が中心部に比べて暗い、立体形状で死角が出やすいことに注意する必要があります。

 

検査部位のピントを合わせる


(2)検査個所のピントが合っている画像にする
検査個所にピントを合わせるには被写界深度が重要です。レンズに近すぎても、遠すぎてもぼやける範囲と、鮮明に映る範囲があり、被写界深度とは、この鮮明に映る範囲(ピントが合っている範囲)のことを言います。
被写界深度が「浅い」=ピントが合う範囲が狭い、 被写界深度が「深い」=ピントが合う範囲が広い、ということになります。
検査部位が立体構造の場合には、奥行方向にピントが合っている範囲が広いことが望ましいため、被写界深度が広くなるようにコントロールする必要があります。



レンズ選定で被写界深度を深くするためのポイントは以下の通りです。
・焦点距離が短いものを選ぶ
・絞りを絞る
・WDを大きいところで使用する

絞りを絞る操作が一般的に調整しやすいため、ここでは絞りの説明をします。
レンズの絞りとは、レンズの開口部(つまり、光が通る穴)の大きさを調整する機能です。絞りを調整することで、レンズに入射する光の量を制御することができます。

絞りは、通常、F値として表されます。F値は、レンズの焦点距離とレンズの口径の比で計算されます。F値が小さいほど、レンズの口径が大きく、より多くの光が通過することになります。逆に、F値が大きいほど、レンズの口径が小さく、少ない光が通過することになります。

絞りを閉じる(F値を大きくする)と、入光する光線が限定され被写界深度が深くなります。

 

明るくて鮮明な画像を取得する


ピントが合うように調整する際に、絞りを絞ることで被写界深度を深くすることがあります。
一方で、全体の光の量が削減されてしまうので、暗い画像になってしまいます。
一般的に、暗くなってしまう場合には、照明の照度を上げる(調光値を上げる、または照度の強い照明種を選ぶ)ことが必要になります。
その他、画像の暗さは、カメラの露光時間にも左右されるので、レンズの絞りと総合的に調整していくことが重要です。

また、近赤外光など特殊な波長の照明・カメラを扱う場合には、その波長に合ったレンズを選定すると画像の鮮明度が上がることがあります。

 

レンズメーカー3選


エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社


会社URL:https://www.edmundoptics.jp/

同社は、光学部品、画像、フォトニクス技術をコアとして、エレクトロニクス、半導体、製薬、バイオメディカルなど、広範囲な分野で世界中に展開しています。。DNA分析から網膜認証、また高速FA用途に至るまで、幅広いアプリケーションに用いていることが特徴です。

株式会社ヴイ・エス・テクノロジー


同社は光学レンズ、光学部品、照明装置の開発、設計、製造をしており、全て自社設計にて、製品を開発しています。
顧客の様々なニーズに幅広く対応し、マシンビジョン用固定焦点、マクロ、テレセントリック、ラインスキャン、ズームレンズ及び監視用ズームレンズを展開しています。
会社URL:https://vst.co.jp/

株式会社タムロン


同社は、総合光学メーカーとして、FA・画像検査用レンズだけでなく、車載用レンズやデジタルカメラ用レンズなど、幅広い製品を手掛けています。
会社URL:https://www.tamron.co.jp/