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外観検査の自動化は難しい!?検査を成功させるためのポイント4選

外観検査の自動化は難しい!?検査を成功させるためのポイント4選

外観検査を自動化するには?


外観検査の自動化には①搬送系(ハードウェア)、②検査を行うソフトウェア の2点の設計が非常に重要であり、完全な自動化を行うにはこのどちらも欠けては成立することはありません。①の搬送系とは、人間の手を介さず所定の位置に製品を持ってくる搬送の工程であり、②の検査のソフトウェアは、撮像機器で取得した画像から良品・不良品の判定を行う工程です。

前者の搬送工程に関しては、前工程から後工程につなげる搬送と、その後の判定をするために、撮像できるように所定の位置に持ってくる搬送があり、特に後者の搬送は、検査ソフトウェアの判定精度や、その他のソフトウェアの機能に関する要件(速度、システム連携)を鑑みて設計を行う必要があります。

検査ソフトウェアの種類


まず、検査ソフトウェアの概要について簡単に説明します。

検査工程を自動化するために有力な手法となるのが画像検査です。生産ラインを流れる製品をカメラで撮影し、定められた検査基準に則ったソフトウェアを使用し、良品・不良品の判定を行います。この検査を行うソフトウェアには大きく以下の3種類があります。

  1. 画像処理(ルールベース)

  2. 不良品学習AI

  3. 良品学習AI


「画像処理よりもAIの方が優れている」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。例えば、配送センターにおける段ボールや紙袋など、一品一葉の製品の外観のキズや潰れを検査したり、微妙な色味の違いを厳密に検査するなどの場合には、学習により判定するAIより、画像処理でルールを定めて検査する方が、正確であったり、立上げが速いケースがあります。

一方で、画像処理よりAIの方が優れている場面が多いのも事実です。複雑な外観の製品では、画像処理の検査の設定が非常に煩雑になるケースがありますが、AIは単純に学習することでデータから判定基準を作るので、設定の簡便さや判定の安定性が高く、利用されることが多くあります。また、同じAIの中でも、欠陥自体を学習する不良品学習が良いのか、良品を学習し検査対象の良品との違いを検出させる良品学習が良いのかは、判定を行う対象製品自体やその欠陥の性質によって異なります。例えば、検査対象の品種の生産が多い検査の場合やそもそも不良品を集めることが難しい場合は良品学習のAIが適応する場面が多いですし、多品種(少量)の製品であっても、似たような見た目をした不良(キズやへこみなど)しか出ないのであれば不良品学習のAIが適するでしょう。

画像検査を実現するには?


外観検査を自動化する上で適切な(=検査基準に則った)判定を行うことは欠かせない非常に重要なポイントとなります。以下の4Mのフレームワークに則して外観検査の自動化が難しい理由を見ていきましょう。

  1. 作業者(検査基準)/Man

  2. 設備/Machine

  3. 製品/Material

  4. 手法(ソフトウェア)/Method


作業者(検査基準)


外観検査の自動化を難しくしている理由としてまず挙げられるのが、作業者及び人が作り出した検査基準です。例えば作業者個人個人によって判断が揺れるような微細な欠陥や曖昧な検査基準が該当します。導線をはんだ付けする工程に対し「導線が見えないこと」という検査基準があったとすると、人によってこの「見える」というのはバラつきがあり、官能評価的な検査となります。官能検査は多くの場合、自動検査の基準作りを難しくします。同じような見た目をした対象でもモノによっては良品、また別の対象では不良品と判定する必要があるため、画像検査に必要な画一的な検査基準では100%の精度をもって検査を行うことが困難になってしまいます。これは特に画像処理の場合に、処理の手続きを記述する際に、検査基準も定量的である必要があるため、そのままでは人間の代替となる検査は事実上不可能になります。

作業者及び検査基準の観点から検査の自動化をスムーズに行うためには、定量化された基準を作ることや、ある程度曖昧なままでもAIに「見た目」を学習させて評価させるという手段があります。

設備


設備の観点でも外観検査を自動化するポイントはいくつか存在します。全周を撮影するために検査対象の向きを変えて撮像することや細かい不良を捉えられる照明・カメラの選定や調整が挙げられます。製品の向きを変えるためには、コンベアラインで製品の向きを変更する(例えば裏面)ためのカラクリを作るケースや、ロボットアームで複数画角を撮像したり、インデックステーブルで全周撮像するケースなど様々な手法が挙げられます。

特に照明の選定は同じ不良の見え方をしていても、画像にした際に大きく見え方が変わるので製品や不良のモードによって適切な照明を選定することが外観検査を自動化する上で非常に重要です。

製品


製品においては品種の多さや製品そのもののバラつきが外観検査の自動化を行う上での障壁となることが多いです。導入時に製品Aでは上手くいった外観検査が製品Bでは上手く判定ができず、横展開に苦労することや、製品の色味やパーツの取付位置の個体差によって過検出してしまうなどが挙げられます。特に、画一の基準で検査をする画像処理では、対象物のばらつきが大きいと、設定が非常に煩雑になります。

こういったケースでは画像処理よりはAIを用い、製品のバラつきを学習によってカバーすることが可能になるケースがあります。

多品種になった場合、画像処理では、品種の分だけ設定をやり直す必要がありますので、導入のためのコストが非常に大きくなるケースがあることに気を付ける必要があります。色味の違いだけでなく、検査領域の設定など、処理の手続きを深く理解している必要があります。一方で、AIは学習で検出するようになるという点で非常にメリットがあるでしょう。

手法/ソフトウェア


最後に手法の観点で外観検査を自動化するポイントを紹介します。ここで重要なポイントはどんな対象を検査し、何を目的とした検査を行う必要があるのかということです。

1分間当たりの検査量が1000個を超えるような高速な検査が要求される場合は、処理が簡素な分高速に計算できる画像処理が適する場合がありますし、不良モードによって分類する必要がある場合は不良品学習のAIが積極的に使用されるなど、製品や目的によって使用する判定方法は大きく変わってきます。

更には対象によってはそもそも画像検査ではなくその他の手法を用いるべきケースも存在します。例えばスクラップ検査などで磁石に付着するものだけを分別したい場合や厚みの寸法計測をセンサーを用いて行うことなどが挙げられます。食品の金属異物の混入にはX線検査を行うなどもあります。このように、手法1つとってもどういった対象に対しどんな目的で検査を行うかによって、用いるべき手法は大きく異なってきます。センシングの方法、処理の方法含めて、最適な手法を選択しましょう。

まとめ


外観検査の自動化を行う上での重要なポイントを4Mのフレームワークを用いそれぞれの観点で何を重視すべきか、何に気を付けるべきかについて説明しました。

外観検査を自動化する上で中枢となる画像検査を司るソフトウェアの部分に目が行きがちですが、あくまで外観検査を自動化する上での1つの部品に過ぎず、その他の検査基準や画像の撮影の部分など他にも注意すべき点が数多く存在します。

また、AIを導入すれば外観検査が自動化できるわけではなく、どういった製品に対して何を目的とした検査を行う必要があるのか、目的に合った手法を選択するということが非常に重要です。